2015年10月25日日曜日

映画『あん』


10月25日(日)、上中里のアートスペースChupki(チュプキ)さんにて、映画『あん』を観てきました。映画三昧な週末。最近映画(特に邦画)をよく観に行ってしまうのは、単純にそういう環境が久しぶりでうれしいのと(ベトナムで邦画は観られなかったので)、身近に楽しい映画仲間たちができたのと(ひとりで観るのも好きだけど、誰かと記憶を共有できるのもいいな)、若干の現実逃避と(本当に若干か?)、その他、いろいろ。


『あん』は、映画館で予告編を観てから気になっていた作品。大きな映画館で観るのを逃してしまっていたので、いつかDVDででも観たいなぁ…なんて思っていたら、ある日、よく利用する上中里駅の近くにC立て看板があるのに気づいて、参加することにしたのでした。娯楽施設の少ない上中里で映画が観られることに感動したのも、参加の理由でした(笑)

会場であるChupkiさんは、毎月4回、その月のおすすめの映画を紹介している小さなアートスペースだそう。視覚に障がいのある人にも映画を楽しめるようにと、独自の音声ガイドの製作や、字幕朗読などのサポートをしていて、この日も音声ガイドが聴けるよう、全員にラジオを配ってくれました。実際に当日の10名ほどのお客さんのなかには、目の不自由な方もいらっしゃっていて、音声で楽しんでいました。

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●Chupkiさんのサイト
http://chupki.petit.cc/

●映画『あん』のサイト
http://an-movie.com/
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さて、その『あん』(以下ネタバレを含みます)。

小さなどら焼き屋を営む主人公・千太郎のもとに、ある桜が満開な日にやってきた老人・徳江。ここでアルバイトがしたいと言う。はじめは邪険に扱う千太郎だったが、徳江の持参した「あん」の美味しさに驚き、あん作りを依頼、二人の協働が始まる。どら焼き屋に通う悩める中学生のワカナも含め、三人の登場人物の心の交流が始まる… 簡単に紹介すると、そんなお話です。徳江がハンセン病患者であることが発覚し、雇い主として悩む千太郎、心ない言葉をかけるオーナー、自然と足が遠のくお客さん、それでも通い続けるワカナ、そして姿を見せなくなる徳江…。少ない登場人物たちの穏やかに静かに悩み続ける心の様子が、四季の移り変わりの美しい情景とともに、とても丁寧に描かれてゆきます。

映画の素敵なところをあげるとキリがなく、「もう、ぜひ観てください」というしかないのですが、ひとつだけ紹介するとしたら、物語の終盤に出てくる徳江さんの言葉。

「私たちは、この世を見るために、聞くために生まれてきたの。だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ、店長さん」

後日、一緒に映画を観た友人とも、「ここの台詞が本当によかった」という話をしました。私たちはつい日々の生活なかで、人の役に立つことや社会に貢献できることに美徳を感じて、自分もそういう人間になりたいという風に思ってしまうようになっています。でもそれは逆に、人の役に立てなかったり、社会に貢献できなければ、自分には価値がないと認めてしまうことでもあって・・・。そんなことはないはずだと、私たちにはひとりひとり、存在するだけで価値があるはずで、ただ、ここに居るだけでいいんだよ、それだけで素晴らしいことなんだよと、徳江さんの言葉に励まされたのが、この映画を観て一番印象的なことでした。そしてハンセン病という重厚なテーマを扱いながらも、それが悲観的にだけ描かれていない点が、この『あん』という映画の美しさだとも思いました。


観賞後は、Chupkiのスタッフさんが作ってくださったどら焼きをいただきました。映画のパンフレットに出てくるレシピを使って再現したというこのどら焼き、本当に美味しくて、作った人のあたたかさを感じるような味でした。いただきながら、会場に居合わせた10名ほどの皆さんと映画の感想を交換。それぞれに沁み入ったポイントがあって、自分とは違った観方があって、そういう話をシェアできたのもよかったなと思いました。私は音声ガイドを、途中ちらっと聞く程度にしか利用しなかったのですが、ずっと音声ガイドで映画を観ていたお客さんの感想で、映像だけではわからなかった言葉の情報が入っていたことを知ったり(どら焼きの生地を焼くための特別なお玉を「どら匙」ということとか)、その方が私が通り過ぎてしまった台詞を細部にわたって覚えていたり、そんな発見もありました。

Chupkiのスタッフさんから聞いた話によれば、監督の河瀬直美さんはリアリティーを重視する人で、映画をストーリー通りの撮影をするために、本当に一年かけて四季の情景を追いかけたり、俳優陣に近くのアパートに泊ってもらって、実際に毎朝どら焼き屋のセットにまで通ってもらったり、千太郎役の俳優・永瀬さんに、レジからお金を取って昼食を買ってもらったり… 様々な工夫をしだそうです。でもそれらの工夫があって、あの映画の丁寧な雰囲気が出来上がっているんだろうな、というのは本当に納得でした。

上中里での上映は10月で終わってしまいましたが、渋谷の「シアター・イメージフォーラム」ではもう少しの間やっているようです。もう、ぜひ観てください。

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2015年10月24日土曜日

映画『ベトナムの風に吹かれて』


Thứ bảy, mình đã đi Rạp chiếu phim Yurakucho-Subaruza để xem một bộ phim Nhật được quay tại Hà Nội, tên là "Hòa cùng làn gió Việt". Mặc dù chủ đề của phim này là suy giảm trí nhớ của người cao tuổi, nhưng nhờ không khí và môi trường tại Hà Nội với những người hàng xóm, cuộc sống của hai mẹ con người Nhật này có vẻ vui vẻ, hiền hòa.


土曜日、有楽町スバル座にて上映中の『ベトナムの風に吹かれて』を観てきました。

本当は、ホーチミンで知り合い東京在住の友人達と3人で観に行く予定だったのですが、私以外の2人が電車の人身事故で足止めを食らい、相談の結果今日はひとりで観よう、ということになりました(笑) そんな日もありますね。

小松みゆきさんの実話をもとにしたハノイを舞台にし作品。認知症をかかえるお母さんとみゆきさんと、おふたりを取り巻く人たちとのあたたかな日々が描かれています。原作(みゆきさんの手記)は未読なので、映画ではどこまでがフィクションで、どこまでがノンフィクションなのか、まだちゃんとわかっていない部分もあるのですが、映画では認知症というテーマを、ときに軽やかに、ときに重厚に、ちょうどいい塩梅で描いていたように感じました。迷子になったお母さんをセオムのおじさんが日系のホテルまで連れてくるエピソードが、ベトナムを感じさせてよかったです。松坂慶子さんの話すベトナム語はとても素敵で愛おしく、草村礼子さんの演技には鳥肌が立ちました。(そしてごめんなさいですが、吉川晃司さんのシーンだけはどうして必要だったのかが謎でした…)

上映している映画館がとても少ないのですが、スバル座では11月6日(金)までだそうです。ご興味ある方はお見逃しなく。

ちなみにベトナムでも公開されたこの映画、タイトルは"Hòa cùng làn gió Việt"となっているようです。日本映画がベトナムで公開されるのは本当に珍しいこと。今後増えていったらうれしいな、と思っています。

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●映画『ベトナムの風に吹かれて』公式サイト
http://vietnamnokaze.com/

●VTV放送局による紹介記事
http://vtv.vn/van-hoa-giai-tri/chuyen-nhung-tam-hon-nhat-hoa-cung-lan-gio-viet-20150820110443217.htm

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2015年10月21日水曜日

自主勉強会、はじまる


Thứ tư, mình đã đến trường đại học Hitotsubashi ở thành phố Kunitachi, Tokyo để gặp một giáo sư đã/đang nghiên cứu về các từ ngữ tiếng Việt và phương pháp giảng dạy tiếng Việt cho người Nhật trong một thời gian khá là lâu.


先輩であるベトナム語講師のEさんと一緒に、一橋大学のある研究室を訪問してきました。ここにはベトナム語研究者のG教授がいて、今年5月に講演会でEさんと共にお会いしてから、「3人でベトナム語自習勉強会をやりましょう」という話をしていて、それから満を持しての訪問となりました。

この日はベトナム語教授についての疑問点や悩みをお互いに打ち明け、勉強会の方向性を話し合い、気づいたらあっという間に時が経っていました。G教授の研究室にはベトナム語の辞書が溢れていて、不明な単語があるとすぐに「こっちではこう書いてあるけど、こっちではこうですねぇ」と辞書を開き出す教授の姿に、長年おひとりでベトナム語に取り組んできた、その誠実さと実直さを垣間見ました。

宿題をひとついただき、次回の勉強会までにそれに取り組みます。楽しみが、続きます。


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2015年10月17日土曜日

ルーマニア料理の夕べ


Thứ bảy, sau khi làm việc xong, mình qua nhà bạn chơi. Bạn ấy là một người giỏi nấu ăn, ngày đó thì nấu hai món ăn Romania cho mình. Ngon lắm, vui lắm.


最近引越しをしたご友人が、新居に呼んでくれました。外国暮らしが長く、料理好きでもあるご友人、今宵は私のために前日から煮込んでくれた(ありがたいです…涙)というルーマニアのロールキャベツと、ヨーグルトベースで酸味の効いた野菜スープを出してくれました。これがどちらもほんと~に美味しくて、美味しくて、ロールキャベツを5つ、スープを2杯をペロリとたいらげる私でした(笑) 料理好きな理由を「自分が美味しいものを食べたいから」と話すご友人の姿が、とても素敵でした。

ルーマニアやその他の国の音楽を聴きながら、久しぶりの再会で、おしゃべりに花が咲き。最近ベトナムの中部に旅行に行ってきたご友人のお土産話もとてもおもしろく、私もまたフエやホイアンに行きたくなってしまいました。

私が最近ちょっと怒ってしまった話をしたときに、「私たちには笑う権利があるように、怒る権利もあるんだから、いいの」と言ってくれたご友人のあたたかさが、美味しい料理とあいまって、体に染みました。誰かが自分のために作ってくれたご飯が、こんなに美味しいということを、久しぶりに感じた夕べ。Rさん、ありがとう。

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